肝を労る
東洋医学では、「長く行えば肝を傷る」と言います。「何事も長時間続けて行うと肝を傷める」いう意味です。例えば一日中パソコンをやっている、一日中動き回っている等、同じことを長時間続けて行っていると血を消耗し続ける為、肝が虚してくるのです。ですから、お茶や甘い物、煙草等の嗜好品で「一服する」ことはとても大切な事と言えましょう。
東洋医学で言う「肝」には、気を全身に巡らせる働き(疏泄作用)と、血を貯めて調節する役割(蔵血作用)があります。
疏泄作用が不調になると、気の流れが滞り自律神経が不安定になるため、些細な事でイライラしたり、逆に憂鬱感に苛まれます。そして気が昇ってしまうため、身体は疲れているのに頭が冴えて眠れなくなる。また、のぼせやメマイ、頭痛など頭部の症状が多く現れます。
蔵血作用が低下すると、身体の隅々まで栄養が行き渡らないため、髪のパサつきや皮膚の乾燥、目のかすみ や乾き、手足の痺れや こむら返り、月経不順や更年期症状が生じます。これらは全て体内の血液が不足(血虚)が原因となります。
当院では、肝兪という背中の一番盛り上がった処のツボにお灸や指圧したり、肝経の14のツボから、てい鍼(刺さない鍼)で気を補います。肝の調子を整えてあげると、不安、イライラの解消や眼の症状、筋肉の痙攣、頭痛、歯痛、腰痛などの症状が改善されていきます。
セルフケアとしては、後頭部と首の境目の凹みにある天柱というツボを上を向いて押し5秒で戻す、これを3、4回繰り返す。その後、深呼吸を3、4回すれば尚良いでしょう。これは頭の疲れを取る方法でもあります。
また、疲れたら甘いものと考える人が多いかもしれませんが、肝虚体質の人には酸味のあるものがオススメ。酸味は筋肉や内蔵を引き締める働きがあり、精神的にも安定へと導きますから適度に摂りましょう。ただし、過剰に摂ると胃を痛めますからご注意を。
現代は歴史上最も目を酷使する時代と言ってよいでしょう。目の使い過ぎは血を消耗し、肝虚になります。本はまだ良いのですが、スマホやパソコンのように光を発すものは目を傷めますので特に注意が必要です。当院の患者さんでも目の使い過ぎから、肝が弱り不調を訴える方がとても多いですね。そんな患者さんに限って、待合室ではスマホを見ているのですが…(笑)
スマホを見る時間があるなら目に負担の少ない本にする、甘い物ばかりでなく酸味のある物を摂る。現代は「肝を労る」ことがとても大切なのです。
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