なぜ人間は風邪を引くのか
今年の12月は例年にも増して風邪を引く人が多いですね。薬局で働いている方に聞いたら「インフルエンザの患者さん、多いですよ」と言っていましたし、当院でもノロウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスにそれぞれ感染した患者さんがいました。そこで各ウイルスの感染部位と症状を大まかにですが挙げておきましょう。
・コロナウイルス
【喉、気管、肺】➡喉痛、咳、高熱
・インフルエンザウイルス
【リンパ系】 ➡高熱
・ノロウイルス
【胃腸】 ➡下痢、嘔吐
・アデノウイルス
【扁桃腺】 ➡喉痛、咳、鼻水
そしてどの風邪にも共通するのが、寒気から始まり熱が上がりだすということ。この時に熱めの風呂に入ったり、香辛料の効いたスープや葛根湯(漢方薬)を飲むと汗が出やすくなる。汗が出れば風邪の経過は早くなります。ただし、熱い風呂や葛根湯は身体への刺激が強いため、高齢者や虚弱体質など「体力の無い方」は逆に疲れてしまいますので控えて下さい。
その熱ですが、体温を上げているのはウイルスではなく自分自身だということを皆さんご存じでしょうか。
ウイルスは体温が上がると非常に活性が下がる。38.5度でとたんに弱ります。反対にウイルスと戦う白血球の機能は37.5度で1.5倍、38.5度で2倍にパワーアップ!!だから風邪を引くと発熱するのです。それなのに現代人はすぐに風邪薬や、解熱剤を飲んで下げてしまう…だからスッキリと治らないのです。
ただし、身体が辛い時は我慢せずに解熱剤を飲んで下さい。または病院を受診してください。
次に、咳は肺の中にいるウイルスを外に出している。鼻水は鼻粘膜に付いたウイルスを外に出している。下痢は腸内にいるウイルスを外に出しています。せっかくウイルスを体外に出そうとしているのに、薬で止めたら体内にずっと留まることは誰でもお分かりになるでしょう。
仕事に支障がある時の服用は仕方ありませんが、止めた分だけ後ろに長引くということを覚悟してこれらの薬は飲みましょう。
さて、先日も2週間前に38.5度の熱が出たという患者さんが来院しました。その方曰く「熱が出た後、柔軟体操をしたら熱前よりも身体が柔らかくなっていた!」と言うのです。私が身体を触ってみると確かに先月より柔らかくなっている。「熱で身体がほぐれて若返りましたね」と言うと喜んでいましたが、こういうことは風邪を上手く経過させた場合よくあるのです。38度以上出れば身体は間違いなく柔軟性を回復します。
まあ、風邪は誰でも引くし、一年中どこかで誰かが引いているものです。しかし、稀にぜんぜん風邪を引かないという人がいます。全く引かないという人には二種類いて「本当に養生が上手な人」か「身体の感受性が鈍っている人」。後者の場合、癌や心筋梗塞、脳梗塞になる傾向の人が多いです。
だからたまには風邪を引き、熱を出して身体の悪い細胞を白血球に叩いてもらう。そういうことが人間が生きていく上では必要なのです。癌細胞も38.5度以上の熱で叩けると言われていますし、風邪を全くの引かないのが健康体だと一概には言えない。
整体の大家 野口晴哉はその著書『風邪の効用』に「身体が敏感な人が早く風邪を引く。小さい風邪をチョクチョク引く方が身体は丈夫です。だから私などはよく風邪を引きます。ただし2時間くらいで経過してしまう。3日も4日もかかるというのは相当鈍い身体で、まあ、なるべく引いたその日のうちに良くなるような身体がいい。それでも風邪を引く内はまだいいのです。」と記しています。コロナ、インフルエンザ等の流行性感冒は除くと思われますが、軽い風邪をちょこちょこ引くのが良いと整体の大家は言います。
我々は様々なウイルスや細菌と共存して生活しています。共存しているということはお互いが必要だということ。だから、手をアルコール消毒したり、口の中をうがい薬で除菌してイジメ過ぎると免疫力が下がってしまいます。
共存する微生物が定期的に増えることによって、免疫力を上げて悪い細胞を駆除する。風邪を引くのにもちゃんと意味があるのです。