膝の痛み
当院での患者さんとの会話。
【患】膝が痛くて水が溜まってるようなのですが、整形外科で抜いてもらった方がよいでしょうか?
【私】抜けば一時的に楽になりますが、炎症がある限り、またすぐ溜まりますよ。
【患】たしかに膝を触ると熱いです。
【私】炎症という火事を、水を溜めることによって消火しているんです。
【患】では、どうしたら…
【私】氷水の入った氷囊で冷やしてください。炎症が治まれば水も溜まらなくなります。
上記のように、膝に水が溜まるという状態は、炎症が起こっていることを意味します。よく温める人がいますが、火に油を注ぐようなものですから、くれぐれもご注意ください。
さて、膝痛は学生時代にスポーツをやっていて膝を傷めた経験がある人や、現在ジョギングやテニスを趣味としている人、薬をたくさん飲んでいる人に多いですね。しかし中年を過ぎ、運動不足や老化で「腰」の可動性が悪くなってくると、誰でも膝の負担が増して炎症を起こしやすくなります。
膝は本来、曲げ伸ばしのみをする関節であって捻るようにできてはいません。ところが日常生活で後ろを振り返る時など、本来なら腰を捻らないといけないのに、腰が固まってしまうと膝を捻って振り返るようになります。すると膝の軟骨や靭帯が傷むことで炎症が起きてしまうのです。
では、運動不足や老化で硬直した腰の柔軟性を取り戻すためにはどうしたらよいのか。それには大股で歩くことが一番なのですが、膝に痛みがあるとそうもいかない。そんな時は【逆自転車こぎ体操】をするとよいでしょう!この体操は腰椎と大腿骨をつなぐ腸腰筋を刺激することで腰から下半身の動きをスムーズにしてくれます。
また、膝の悪い人に気を付けて欲しいのが、歩行時に「つま先」と「膝頭」を真っ直ぐ前に出して歩くということ。特に女性はつま先に対して膝頭が内に向く傾向があります。すると膝に捻れが生じて膝痛に…。
膝を長持ちさせたい方は「つま先」と「膝頭」の方向を揃えて歩くこと。これを意識付けていただければ、O脚やX脚の予防にもなるので一石二鳥です。
さて、膝痛の患者さんからよく受ける質問に「コンドロイチンとか関節軟骨に効くサプリメントを飲んだ方がよいですか?」というのがあります。当院の患者さんを診ている限り、残念ながらコンドロイチンの効果が認められた方はおりません。あしからず。
また、「サポーターとか着けた方がよいのでしょうか?」との質問もよく受けますが、生地が薄く圧迫力の弱いサポーターでしたら、痛みや腫れのあるうちは着けた方がよいでしょう。当院でも膝痛患者さんには超ソフトなサポーターを渡していますが、皆さん「えっ、こんな薄くていいんですか?!」と驚かれます。でも翌回には「あのサポーター良いですね」と言ってくれる方が多いので、膝痛にソフトなサポーターは効果があるようです。
最後に東洋医学では「膝は腎と関係する」と考えます。実際に中年以降、腎臓が弱ってくると膝が痛んだり、黒ずんだり、汚れた感じになってきます。つまり膝には腎臓の状態が現れるということですね。
だから、膝痛は治るのに時間がかかるといわれているのも、腎臓の状態の良し悪しが関係してくるから。ゆえに東洋医学では必ず腎経を用いて膝痛の患者さんの施術を行っています。
このように膝の痛みは、膝自体の問題もあれば、腰や腎臓の影響を大きく受けるため、治癒には時間を要することが多いです。しかし腰や腎臓をケアしながら上手に膝を使っていけば、寿命まで自分の脚で歩き続けることは十分可能なのです。
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