我動けば宇宙動き 宇宙動けば我動く
冒頭の書は天才整体師・野口晴哉の言葉を「千言堂」にお願いして書いてもらったもので、野口晴哉エネルギーが院内に満ちるよう壁に掛けてあります。
先日もこの書を見た患者さんから、「この言葉が載っている『治療の書』とは、どんな本なのですか?」と聞かれました。当院には野口晴哉に興味をお持ちの患者さんが多いので、代表的著書である『治療の書』について、触りだけですが紹介したいと思います。
【治療といふこと 一生懸命に行う可からずものにして常に楽々悠々行う可也。一生懸命にならねば行へぬやうな治療為す可からず。治療して効ある迄不安あり、効あがれるを見てホットするが如きは 治療の力養はざるの人也。
当たり前のことが 当たり前に行はれて 当たり前の気持ちで その経過を眺めている者のみ 治療といふこと行へる也。良くなって喜ばず 悪くなって慌てず いつも平然として 治療のこと行ひ得るに至りて 治療といふことある也。】
このように当時の原文のまま140ページに渡り、書き記されています。治療を為す者が持つべき心構えから始まる本書は、真の治療とはなんぞやという本質が書かれている。ゆえに、医療に携わる者にとって必読の書であると思います。
また、医療従事者以外の方にオススメなのが『回想の野口晴哉』。こちらは妻であり、真の理解者でもあった昭子夫人が書き記した回想記です。こちらも触りを少々。
【ある人の話によれば、最高級蓄音器の輸入展示会に朴歯の下駄を履いた少年がつかつかと入ってきて、溜息の出るほどの値段のものを「これを下さい!」と言ってさっさと買っていった。これには一同唖然としたが、それが野口少年だった。
それはまさに「念ずれば現ず。我が思う如く、我が事成る也」であった。この言葉を野口語録で読んだ私は、ある日、先生に聞いた。「念ずれば現ずなら、人を呪うことでも実現するのか」と。すると先生は「それもまた、自分に返ってくるのさ」と、いともあっさり答えた。
確かに、天に吐きかけた唾は自分の顔にかかる。人を呪っている人の人相は悪い。その逆に人の幸せを願っている人の人相はどこか美しい。そうすると、自己の世界はいつの間にか、自分自身が作っているのかもしれない。】
伴侶としての眼差しと、弟子としての思索が融和し、野口晴哉の人となりを知る上で最適の本です。夫婦間の会話も豊富に盛り込まれていて愉しく読めます。
私は野口晴哉が大好きで、著作は全て読んでいるのですが、野口整体の講座を受けたり、お弟子さんに施術を習ったことはありません。しかし、ある患者さんに「あなたの手は野口整体をやっている人の手に似ている」と言われたことがあります。その患者さんは、お弟子さんの施術を受けたことがあり、その手つきが同じだと言うのです。
これにはビックリしたと同時に嬉しかったですね。何せ私は本しか読んでいないのですから。著作には著者の魂が宿ると言いますが、それを体感させられる出来事でした。
明治に生まれ大正・昭和を通して、自らの信ずる道を歩き続けた野口晴哉という天才の言行に皆さん是非触れて欲しいですね。優れた魂に触れることで、我が魂は磨かれるのですから。