人生の函谷関
私事で恐縮ですが、本日50歳の誕生日を迎えました。「光陰矢の如し」と言いますが、まさしく歳月の経つのは矢のように早いものですね。
さて、50歳という年齢は更年期ともいわれ、人間の老化過程の中でも特にホルモン変換が激しい時期なので、身体の変調を伴うことが多くなります。特に女性は50歳前後で閉経期に入り、ホルモンが大転換するので、身体からすれば仰天するような身体の動きが起こります。男性の私でさえ、ここ一・二年でホルモンが転換し始め、動悸や目眩などのいわゆる更年期症状がでているくらいなので、ホルモンが大転換する女性はさぞかし大変なのだろうと…。
そんな更年期に老化を意識して体力維持の目的でスポーツを始める人も最近は多いようですが、更年期というのは精神的にも肉体的にも老化を受け入れる時期なので、活動を控え目にする事を覚えなければなりません。
当院の患者さんを診ていると、騒げば騒ぐほど身体の調子は悪くなるし、精神的にも不安定になり、老化の苦しみに苛まれる傾向にあります。こんなときは“ 時薬 ” と言って、黙っておとなしく過ごしている人が一番上手く経過する事ができ、尚かつ軽く済んでいます。
そして、ホルモン代謝が老人型に変わって安定した後は、老人として元気溌剌と活動すればよいのです。大切なのは、更年期を上手く乗り切るには、老化を素直に受け入れるという姿勢が必要だということ。五十肩などの関節痛も更年期に起こる代表的障害ですが、病院でリハビリをしたり、無理に治そうとすと、そこから本当の欠損になっていく場合があるので注意が必要です。要するに痛むということは、おとなしくしていろという身体の信号でもあるのです。ただ、どうしても辛い場合は鍼灸・指圧などの東洋医学的なサポートを受けながら乗り越えていくのが良いでしょう。
更年期障害とは病気ではないので、「治す」ではなく「乗り越える」もの。つまり、人間が最後まで健康で充実して “生ききる” 為にある関所、人生における函谷関なのです。