体育座りは身体に悪い?
先日、背中の痛みを訴えた患者さんが来院しました。問診すると「昨日、子供の運動会を体育座りで長時間観戦していた」と言います。長時間、体育座りをしていると、骨盤から背骨にかけて本来あるS字カーブが崩れ、凝りや痛みがでたり・猫背や側わん症の原因となります。
近年、「体育座りは身体に悪い」ということが言われ始めていますが、私も日本の教育現場で行われている体育座りは悪しき習慣だと考えます。戦後から体育座りはあったようですが、当時はまだ文字通り体育の時間だけで、校庭では相撲の蹲踞(そんきょ)姿勢、体育館では正座が常だったそうです。家庭でも正座を躾けられていたものですが、現代では“体育座り”でテレビを視ている子供も少なくありません。
体育座りを習慣にしていれば、背中が丸く、すぐに疲れてしまう人間が増えていきます。ゆえに、成長期の子供には体育座りの時間的短縮をはかり、出来るだけ正座や蹲踞姿勢、または椅子を使うよう習慣付けてあげることが大切ではないでしょうか。
背骨は本来なら横から見るとキレイなS字のカーブを描き、地面からの衝撃を緩和しています。しかし、体育座りやあぐら座り等、尾てい骨を圧迫するような座り方を続けていると、S字カーブは少しずつ失われていく。すると、神経の伝達に悪影響を及ぼし、様々な不調や機能の弱体化を招きます。例えば首のアーチが失われたストレートネックの人は、首肩こりや目鼻耳の不調を訴えますし、腰のアーチが失われると腰痛や泌尿器、婦人科の不調が現れやすくなります。
そもそも、農耕民族の末裔である日本人はS字カーブか小さいため姿勢が悪くなりやすい。だから日本では子供のうちから「姿勢をよくしなさい』と言われます。一方、狩猟民族の末裔である欧米人は元々S字カーブが大きいために姿勢が良い。欧米人に肩こりや腰痛か少ないと云われる所以は、この立派なS字カーブにあるのです。
その大切なS字カーブを消失させる体育座りを、大人になっても日常生活で何気なくやってしまう人が日本人には多くいます。子供の頃からの習慣というものは、良きにつけ悪しきにつけ怖いものですね。