先日、ある学生の患者さんから「前回の施術中に話したこと、よく覚えてますね。記憶力がいいんですね！」と言われました。

私は決して記憶力のよい人間ではないのですが、これは大事だなと思う事柄だけはけっこう覚えています。
それは重要だと感じた事を色々な形でアウトプットしているからなのかもしれません。例えば、言葉にして話す、メモをとる、ブログに書く等々。頭の中から忘れてはいけないと思う事柄を取り出し、反芻することで記憶として脳ミソに刻まれていくのだと考えているからです。

このように人間の脳は情報や知識をインプットするだけではすぐ忘れてしまうが、アウトプットを行う事によって記憶として身体の奥深くに定着される。またアウトプットには、頭の中にゴチャゴチャに詰め込まれた情報や知識を整理して、いざという時に取り出しやすくしてくれるという効果もあります。
私達は情報・知識の記憶や整理は頭の中だけで簡単にできると思いがちですが、一部の秀才を除いて実際はそうではない。私などアウトプットしない事柄はすぐに忘れてしまいます…。そんな凡人でもアウトプットを実行し、反芻することで記憶として定着し、何とか使いこなせるようになるのです。

ちなみに冒頭の学生さんには「同じ勉強をするにしても、黙読より音読の方が覚える。筆写すればもっと覚える。記憶というのは手間をかけた分だけ忘れにくくなるんだよ」とアドバイスしました。
映画監督の北野武さんもその著書で「インターネット検索ボタン一つで簡単に調べた事は身体の浅い部分にしか入らない。だから、すぐ忘れちまうんだ。でも、辞書や図鑑で苦労して調べた事は身体の深い所に入るから忘れなくなるんだよな」と語っていました。
また、東京大学文学部を首席で卒業したという女性がラジオ番組で「私は頭の良い人間ではないので、何でも７回繰り返して読みます。そして７回繰り返せば大抵の事は憶えられます。私に優れた所があるとすれば、７回繰り返す事が出来るということでしょうか」と言っていました。

どうやら記憶というものは、手間と時間ををかけて反芻することで、脳ミソに深く刻み込まれていくもののようですね。