強揉みにはご注意を!
先日、「床屋で首と肩を強くマッサージしてもらったら、翌朝から寝違えたみたいに痛む」という患者さんが来院しました。
床屋につきものの散髪後肩モミ。やってもらえば気持ちいいし、やる方も親切心から一所懸命にやる。ところが、その一所懸命の親切心が実はアダとなる事もあるのです。
確かに肩モミはやってもらった時は気持ちいい。しかし、強く揉むと筋繊維が傷んで翌日には肩コリはもっと酷くなります。
“生き物の体”というのは強い刺激を与え続けられると、身を守ろうとして徐々に硬くなる。筆圧が強い人の指に鉛筆ダコができるように、肩や首も外から強い力で頻繁に揉みほぐされると、次はそれに負けまいとしてもっと硬くなる。その繰り返しでどんどん硬直していくと、血液の循環に支障をきたし、肩コリはもっと酷くなる。そして硬くなった筋肉に血液を通すために心臓は血圧を上げざるを得なくなるのです。
また、マッサージ椅子などは一定の時間、一定の動作で繰り返しゴリゴリと身体を痛めつける。「最初は弱でやっとだったのに、最近は慣れて強でも平気なの」などと自慢している人がいますが、それは、身体が機械の攻撃から身を守るために順調に硬くなっている証拠。身体が硬くなると寿命を縮めることにもなりかねないのです。
だから、私はソフトな手技で如何に治すかということを施術では心掛けています。鍼も「てい鍼」と呼ばれる刺さない鍼を主に使うし、お灸も「台座灸」といわれる痕にならないものを使います。これも極力、刺激量を少なくするためです。
私はよく初診の患者さんから「強く揉んだりしないのに軽くなりました。不思議ですね」と言われますが、不思議でも何でもない。東洋医学とは「首や肩のコリや腰痛等を手足のツボを刺激して治す」とういう技術が主で、ゴリゴリと患部を揉みほぐす技術ではないのです。
ただし、身体のうちで揉みほぐしてもよい所があります。それは手の平と足の裏。ゴルフボール、テニスボール、野球ボール等、お好みのボールでコロコロと気持ち良い程度にほぐすと良いでしょう。
この2カ所は外力に対して元々強くできているので毎日ほぐしてもOK。私など高校生の頃から毎日寝る前に足裏を野球ボールでコロコロやっていますから、かれこれ30年の実験済み。元プロ野球選手のイチローも足裏だけは毎日念入りにマッサージしていたそうですよ。
手の平、足の裏には多くのツボがありますので、皆さんも是非コロコロ刺激してみてください。