心と体はつながっている
私達、施術を行う者は患者さんが玄関から入って来て、施術室に入るまでの動作を見ています。これは望診といって東洋医学では重要な診察の一つなのですが、施術のプロでなくとも、悲しい時は後ろ姿だけでも悲しみが伝わります。嬉しい事があった人は歩き方だけを見てもわかります。というのも、心と体が密接に関係しているからでしょう。心が元気だと身体の動きもイキイキし、心に疾しい事があると体の動きもぎこちなくなってきます。
例えばスーパーで警備員が万引きを見つけるとき。現場にいなくても、モニターを見ているだけで「おかしいのが入ってきたぞ」と分かるそうです。たくさんの人が入店する中で「これがおかしい」とピックアップ出来るのは、やはり体の動きが何処か変なのだと思います。ベテラン警備員にとってみれば、相手の動きを見ているだけで心に疾しい事があるかどうかが、すぐに分かるといいます。
正常な神経の持ち主ならば、万引きをしようと考えているだけでも、心の何処かにストレスがかかっているはず。そんな楽して何かを得ようとする疾しい心が体の動きに無意識に出てきてしまうのでしょう。そして、終には体まで病んでいくのです。
逆に体の状態によって心が影響を受ける事もあります。以前、ストレスで頭蓋骨がカチカチに硬くなっていた患者さんがいました。そこで2週間に1度のペースで通ってもらい、体を整えていくうちに頭蓋骨が柔らかくなってきました。私が「石頭が治りましたね」と言うと、「えっ、最近、自分でも物事をよい方に捉えられるようになったと思っていたんです。頭の硬さと関係あるんですね!」と。いつの間にか頭が柔らかくなり、ストレスにも上手に対応出来るようになっていたのです。
私はストレスというものが無いので頭蓋骨が柔らかいのですが(笑)、皆さん日々、様々なストレスを抱えているようです。そして、ストレスというと心の問題だと思われがちですが、最近は心からアプローチするだけでは不十分だと多くの人が気づき始めているのではないでしょうか。
私の30年の施術経験からも、心と体は別々ではなく互いに影響を与え合っている同一のものだと確信しています。だから、労働・食事・睡眠をちゃんとした上で体も整えていけば、ストレスにも動じない強い心になることができます。なぜなら、心と体はつながっているからなのです。