冬の助っ人「カイロ」の貼り方
寒くなってくると、凝っている所や痛みのある所に「カイロを貼る」という方も多いのではないでしょうか。しかし、気をつけないと症状を悪化させたり、治りを遅くすることがありますので貼る場所には注意が必要です。
先日も更年期の患者さんが「生理の出血が一ヶ月ほど続いている」と来院しました。よくよく話を聞いていくと「寒くなってきたので、毎日お腹にカイロを貼って常に温めている」とのこと。しかし傷口でも何でもそうですが、人間の身体は温めると血管が拡張し、血が止まりにくくなるのてす。なので施術の後、カイロを外すよう伝えました。後の話ではカイロを外したら出血は止まったそうです。
また、「ぎっくり腰でカイロを貼っていたがなかなか治らない」という患者さんも。「ぎっくり腰」は正式名称を「腰部捻挫」と言います。捻挫した所は腫れて熱をもっています。そこにカイロを貼って温めたら…火に油を注ぐようなもの。それは治りが遅くなるのも当然です。捻挫はまずアイシング(氷水を入れた氷嚢で患部の熱を取る)が基本ですからね。
「でも、痛い処や凝った所にカイロを貼ると楽になるのよねぇ~」という患者さんも確かにいます。人間の身体は温めると痛みや凝りに対する感覚が鈍るのでそう感じるのでしょう。しかし私の診ている限り、そういった患者さんの治り方は遅い。凝りも取れていない…。やはり、患部にカイロは貼らない方が賢明です。
では、婦人科疾患や腰痛の場合、どこに貼ればよいでしょうか。これらの症状は冷えが根底にあるので、人体で一番冷えやすい「足裏」に貼ることがオススメです。足先には動静脈吻合と呼ばれる場所があり、ここを温めることが冷え取りには一番効果的。私はカイロというものを普段は貼らないのですが、初詣など寒い場所に長く行く時などは「足裏カイロ」をして足下からの冷えを防いでいます。この他にも腎臓が弱っている時や喉の痛みがある時などに貼るとよいでしょう。
また、頭の疲れ・寝違え・肩コリ・呼吸器の症状・循環器の病気・肋間神経痛など、上半身の症状には「肘」に貼ると効果的です。「肘」には肺経・心経などの経絡が流れていますからね。触ると分かりますが、肘の後側(曲げると尖る所)は意外と冷えているのです。ここに貼るとよいでしょう。
このようにカイロは手足に貼るのが効果的です。皆さんがよくやっている背中や腰・お腹などの体幹部に貼るのは、新陳代謝が落ちる高齢者になってからにしましょう。若いうちからカイロを体幹部にペタペタ貼っていると、自ら熱をつくる機能が落ちていわゆる「寒がり」になってしまいますのでご注意を。カイロは上手に使いましょう!