戸嶋靖昌展 縄文の焔と闇
秋田を祖とする画家・戸嶋靖昌の稀有な魂は如何にして育まれたのか。その問いに答える展覧会が秋田県立美術館で開催されているということで先日足を運びました。
戸嶋靖昌とは存命中、実業家・著述家である執行草舟氏が「現存する画家の中で最大にして最高の人物」と語っていた画家です。
秋田駅で新幹線を降りた私は、まず稲庭うどんと比内地鶏で腹ごしらえ😊戸嶋の油彩画と彫刻が120点展示されているということで、空腹で対峙したら、その崇高なエネルギーに倒れます。
外に出ると空はどんよりと低い雲が垂れ込め、これぞ冬の日本海側という天候。雪国に生きれば我慢を覚える。囲炉裏のそばで物事を深く考えるようになる。ゆえに信念が強くなる。秋田の冬が戸嶋の魂を磨き、絵画制作にも大きな影響を与えたのでしょう。
安藤忠雄による設計・建築で知られる秋田県立美術館は三角形と直線のモチーフが繰り返される幾何学的な空間。絵画・彫刻が並ぶ大展示室は奥行きが50mもあり、霊界と現世が同一だった時代・縄文を感じさせます。昔は雪に覆われると家の中にいる以外何もできません。その間は文明社会からも切り離されるため、今でも秋田は縄文という非日常を残しているのです。
縄文時代は人間の生命の中にある理性と情念のうち、情念が勝っていたのですが、弥生時代以降は理性によって情念が段々と押し潰されていきます。そして現代人は情念を失くしたので闇がない。焔もない。深い悲しみがないから真の喜びもなくなってしまいました。
執行氏は言います。「戸嶋は縄文人が持っていた情念というものを現代社会に甦らせようとした。人物を描いた場合、その中にある生命としては暗くて重くて悲しい部分、つまり生命の根源の部分を描いている。暗くて重いことが良い悪いではなくて、生命を成り立たせている本質であり、それを描こうとしているのが戸嶋芸術なのです。」
確かに戸嶋の絵画からは暗黒の闇を感じます。しかし、対峙しているとその反動エネルギーである焔が身体の奥底から湧き上がってくる。これが情念というものなのか。
2日間、計4時間にわたり縄文の焔と闇を描いた戸嶋芸術と対峙することで、非日常を感じ、自己の生命を賦活させてもらいました。そして最後は秋田名物きりたんぽ鍋を堪能して、私は秋田の地を後にしました。
戸嶋靖昌展は令和3年1月10日まで秋田県立美術館で開催されています。
執行草舟公式Webサイトにて【戸嶋靖昌とは何ものか】特別動画サイトも公開されています。
執行草舟公式Webサイト http://shigyo-sosyu.jp