「心揺るがす講演を読む」
この本の著者は長年に渡って様々な講演会を取材している日本講演新聞編集長 水谷もりひと氏。著者の心を揺るがした10本の講演記事が転載されており、各々の講師の思いの部分が各20分で読める内容にギュッと纏められています。その中で私の心を揺るがした講演を紹介したいと思います。
「人間、その根源へ」 ㈱日本生物科学 代表取締役 執行草舟
「人間以上のものたらんと欲する時にだけ、人間は本来的な人間となる」スペインの哲学者ミゲル・デ・ウナムーノの言葉です。つまり「人間でありたい」とか「人間として生きたい」では人間にはなれない。人間は「不可能だと思われることに挑戦し、人間には無理だと思うようなことに挑むのが人間なんだ」ということです。昔の人は信仰というものがあったので、人間としての人生を生きることが出来ました。しかし信仰のなくなった現代では何が必要かというと、「青春の苦悩」です。これが一人の人間を作り上げていく原点なのです。一言でいうと「自分の人生を捧げ尽くすものを追い求める」ということ。これ以外の悩みは「青春の苦悩」ではなく、ただの自己固執、エゴイズムです。「自分が認められない」とか「自分のしたいことが出来ない」、そういう悩みは自分の欲望が達成されていないだけです。悩みとは何か。苦悩とは何か。それは「自分の命を捧げ尽くすものを探し求める」ということです。そしてさらに大事なことは、その先にある「自分の命を捨てるに値するものを見つける」ということです。それが真の人間のやるべきことです。これを見つけることこそが本当の人生なのです。
本書に書かれているほんの一部を挙げさせていただきました。この講演で私は自分の命を捨てるに値するものは「ご縁のある方の治療に全身全霊で尽くす」ということだと確信を得たのです。自分の命を捧げ尽くすものを見つけられた私はとても幸運だと思いますが、ここで満足していては真の人間にはなれません。ご縁のある方の役に立てるよう治療家としての人生を歩み、本当の死を全うしたいものです。